先日、東京へ慢性疼痛の勉強会に
行ってきましたが、不思議なもので
その症状を訴える患者さんが
今日、来院されました。
当院では、痛みを感じている部位を知るために
問診票の人体図に ○ を入れていただきます。
たいていの方は、1カ所か2カ所、
多くて3カ所くらいです。
その方は、10カ所、○ を
入れておられました。
こんなにたくさんの場所が
同時に痛くなるのは、
何か重大な全身症状がある
可能性がありますと
お伝えしました。
そして問診をしっかりして、
はっきりとした病気はない
旨を確認しました。
そこから先日のセミナーで
教えていただいた知識を
交えながら、痛みの原因を
説明させていただきました。
痛みはその原因によって
①侵害受容性疼痛、
②神経障害性疼痛、
③心因性疼痛に分類されます。
①侵害受容性疼痛は、炎症や
組織の損傷によって本来細胞内にある
ブラジキニンなどの発痛物質が
末梢の侵害受容器を刺激する
ことによって生じる痛みです。
この痛みには、抗炎症作用を持つ
非ステロイド系の鎮痛剤NSAIDsが
よく効くといわれています。
②神経障害性疼痛は、体性感覚神経に対する
損傷や疾患によって引き起こされる痛みで、
灼けるような、うずくような、
ヒリヒリするような、ビーンと走るような、
といった特徴的な性質の痛みで、
痛覚過敏や、触刺激で痛みが誘発される
アロディニアといった症状が
起こることもあります。
③心因性疼痛は、身体の異常に
よるものでなく心理的な要因に
由来する痛みであったり、
ケガをしたところの痛みが
心の悩みなどに修飾され、
本来ケガは治っているにかかわらず
心由来の痛みが重要な因子となっている
ような痛みです。
交通事故後の補償問題等から
症状が遷延している
頚椎捻挫等の痛みや、
普段家族から疎遠にされている老人が、
身体の痛みを訴えたことによって、
家族から続々と連絡が来たり、
大切にされたりしたことが
誘因となって痛みを訴えることが
習慣になってしまう例もこれはいります。
今回の患者さんには、身体の痛みも心の痛みも
実際に脳ではどちらも同じ部位に
興奮があり、心の痛みが
うそでも間違いでもなく
本当に痛いことをまずお伝えしました。
ただし、この痛みから逃れるためには、
ケガの治療だけではなく
痛みが強く不安があれば、
心療内科で受診し抗うつ剤や
抗てんかん薬の処方を
していただいたり、
認知行動療法という心の状態を
意識する療法を選択します。
痛みを身体の中から探すのではなく、
痛みがない時間や姿勢などを
心で確認して、痛みが無い状態を
脳に植え付けていく
ことが必要になります。
患者さんは、いくつかの資料と
私のメモ書きまで持って帰られました。
一刻も早く痛みと苦しみが
取れることを私は祈っております…
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